【R18夢小説】手に入らないモノを求め【HQ/影山飛雄】
第27章 第二十四話 ユメダッタカ ノヨウナ
ギュッと胸が締め付けられる感覚に襲われる。
「池ヶ谷ちょっといいか?」
烏養さんの声にハッと向くと池ヶ谷が駆け寄っていたのが見えた。もう俺の方を見ていないし後姿になってしまったので顔が見えない。
色々と話し込んでいる様子を見ると、休んだ間の話をしているのだろう。
何時までも池ヶ谷の事を見ていたら不自然なので、急いで練習に参加をした。さっきの池ヶ谷の顔を忘れてしまう様にがむしゃらに打ち込んで。
休憩時間の度に池ヶ谷の方を見るがやっぱり必ず誰かがいて近寄れない。そう言えば何時も俺は池ヶ谷の事を遠くから見ていて、自分から積極的に近付いていなかった事を思い出した。
池ヶ谷から近付いてきて声をかけてもらって。俺は何もしていなくて。それが俺達の距離だった。
触れたくても遠い。話したくても誰かがいる。
もどかしい思いを抱えたまま、気が付けば夕方の自主練の時間になっていた。
池ヶ谷が俺のモノになっていたなんて全部夢だったのではないか。そんな感覚に陥っていると声が聞こえる。
「俺今から別の所で練習なんだ」
「そうなんだ」
やっぱり池ヶ谷は日向と話しているのが楽しそうだ。ずっと笑顔で可愛い姿だ。
ぎゅっと握り拳を作ってから新しい速攻の練習を一人始めようと準備をして、谷地さんの姿を探す。
トス練にはボールを上げてもらう補佐が必ず必要だった。谷地さんが居ないと思っていたら背後から池ヶ谷の声がした。
「影山君」
「っ !? 」
バッと振り返ると俺の反応に驚いたらしい池ヶ谷が目を丸くしていた。バクバクと鳴る心臓を落ち着かせながら、俺は尋ねた。
「ど、どうした?」
周りに誰もいない一人っきりの池ヶ谷の姿に、抱き締めたい衝動が止まらない。でも此処に誰もいない訳じゃないから、グッと堪えていると池ヶ谷は言う。
「仁花ちゃんから影山君のトス練手伝って欲しいって言われて」
谷地さんに言われて来たのかと心を落ち着かせて言う。
「ボールを上げてもらうの頼んでいいか?」
「うん、私でよければ」
ニコッと微笑む池ヶ谷はやっぱり何時もの池ヶ谷そのもので、朝までの姿は何処にも存在しなかった。
「…………よろしくお願いします」
「はいっ」
池ヶ谷の笑顔が真っ直ぐに俺を見てくれているのに、俺だけを見てくれていない。そんな気がしてならなかった。
