第10章 影山飛雄夢 プロポーズセックス※加筆修正版
「…………ごめん」
「……知らない」
布団を頭まで被り、出てきてくれない。何度も声を掛け続ける。
「……我慢出来なかった」
「……変態、馬鹿」
「俺と結婚して欲しい」
「…………」
返事が返ってこなく、中出しはやっぱりやってしまったと後の祭りなのだが、影山は後悔していた。
高校一年から付き合いだし、もう五年になり、互いに成人するので、本気で結婚したいと影山はずっと思っている。
子供も欲しいと思っているのも本心で、そろそろ養えるだけの蓄えも目標に達していて、それも最後までしてしまった原因に繋がる。
五年も付き合い、当たり前の様に傍に居てくれるので、同じ気持ちだと思っていたのは自分だけなのかと悲しくなって来た。
「……なぁ」
自分達は想い合っていないのか、と尋ねようとした所、声が聞こえた。
「……バレーと私、どっちが大事?」
もそ、と包まっている布団から顔を出して尋ねられた内容。
それは影山にとって同等であり、比べる事が出来ない事案。だから、そこは正直に答える。
「両方」
この答えも駄目だっただろうか、と不安になってしまう。
今日がきっかけで二人の間に溝が生まれて、別れる事にでもなってしまえば……。
そんな不安に心が押し潰されそうになっていると、ギュッと小指を掴まれて言われた。
「知ってる。だから……絶対に両方大事にしてくれなきゃ、結婚は……しない」
その返事に目の奥が熱くなった。どうしようもない感情が後から後から溢れ出てきて、布団の中から少しだけ出ていた手を強く握りしめ、影山は答えた。
「絶対……絶対に約束する!」
「……じゃあ結婚して幸せにして」
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに微笑んでいるその表情を見ているだけで涙が出てきそうになった。
ずっと傍に居てくれた彼女が、これからは伴侶になるのだと思うと幸福感で死ねる様な錯覚を起こしてしまう。
「……任せろ」
どうしようもない気持ちを伝えたくて、布団に包まる姿のまま強く抱き寄せる。
強く、でも優しく抱きしめながら、深く長い口付けを交わした。
(2021,4,15 飛原原)