第9章 怪我をした
「そう言えばなんで怪我したんだ?具合でも悪かったのか?」
宇髄がそう尋ねると、ひなたは分かりやすくオドオドし始めた。
「えっと、そう、そうなんです。ちょっと体調が、悪くて、、、」
宇髄の、ぜってぇ嘘だろ、という視線に気づき、ひなたの言葉は尻すぼみになった。
「で?本当は?」
ひなたは、小さく溜息をついて、
「呆れないでくださいね。」
と小さくつぶやいた。そしておもむろに、左手を隊服のポケットに入れた。
「転びそうになった時に、これを庇ったんです。」
ひなたの左手にはハンカチが、そして手鏡が包まれていた。
宇髄は見覚えがあった。ハンカチも手鏡も、まだ両思いになる前にプレゼントした物だ。
つまり、ひなたは手鏡が割れないように変な転び方をしたのだ。傷が右側に集中していたのも、左のポケットに手鏡が入っていたからだ。