第4章 宇髄くんがんばる
ある日の夜中、宇髄は目を覚ました。
そっと布団を出ると、ひなたの部屋の前で立ち止まる。
「ひなた?大丈夫か?」
襖を開けずに静かに声をかける。
「音柱様っ?申し訳ありません。起こしてしまって。
厠へ行こうと立ち上がったら布団に足を取られて、転んでしまって。」
先程宇髄には、ひなたの悲鳴が聞こえていた。
普通なら気づかないかも知れないが、さすがそこは音柱と言えよう。
宇髄は小さく溜息をついた。
「悪い。開けるぞ。」
宇髄はひなたの部屋の襖を開ける。
びっくりした顔で宇髄を見上げるひなたの頬は涙で濡れていた。
「音柱様っ、あの、これはですね、、、、」
ひなたは慌てて頬を手で拭いながら話し始める。
「嘘つかなくていい。さっきの悲鳴はどう聞いたって転んだ時の声じゃないし。第一、転んだ音がしなかった。」
ひなたは口を噤む。その目には、また涙が溜まっていた。
宇髄は部屋に入ると、布団の上で座り込んでいるひなたを抱きしめた。
「音柱様っ!!おやめください。」
ひなたは宇髄を押し返そうとするが、びくともしない。
元々の男女の力の差もあるし、小柄なひなたと大柄な宇髄は40cmほどの身長差がある。
それでもひなたがもがいていると、耳から優しい声が流れ込んできた。
「大丈夫だ。落ち着いて。ほら、深呼吸。」
その声に、ひなたは暴れるのをやめた。大きな温かい手がひなたの背中を優しくさすってくれている。
「、、、ふえっ、ふえっ、、ふえ〜ん、、、」
ひなたは子供が泣きじゃくるように、泣き出した。