第1章 祝い
ジャンの鼓動が聞こえる。
つい衝動的にジャンに抱き着いてしまった私は、恥ずかしくなりパッと離れた。
ジャンも気まずそうに頭をかいている。
「さ、座ろう。」
立ち尽くすジャンの手を引いてシートに膝をつく。
軽食の入ったバスケットの下に小さめメモ用紙が挟まれている。
ジャンに気づかれないようにすぐさまそのメモを回収して手の中に忍ばせる。
ジャンは目を輝かせて珍しいケーキとシャンパンボトルに見入っている。
その様子にフィンはふふっと笑いながらメモを盗み見る。
【がんばれ!!】
太い文字で力強く一言描かれているだけだった。
メモを見てフィンは小さく吹き出す。
いかにもサシャとコニーが書きそうな言葉だった。
二人と食事をとっていた時についジャンへの想いを漏らしたことがった。
コニーは口から飲み物を吹き出し、サシャは勢いよくパンを飲み込み詰まらせた。
驚きながらも私の想いを応援してくれていた。
会ったらお礼を二人にしないと。
くすっと笑みがこぼれる。
「ねぇ、ジャン。せっかくだから開けよう。」
フィンは大きなシャンパンボトルを片手にジャンに見せた。
「あぁ!!そうだな!!」
ジャンの目は輝いてる。
上官ですら滅多に飲めないシャンパンを二人でどんな味なのか楽しみにボトルのコルクに手をかける。
ポキッ______
嫌な音がした。
ジャンの手のひらには折れたコルクの残骸が。
ジャンが開けようと折れた栓を指をねじ込み引っ張ってみるが全くあかない。
フィンもジャンに変わり開けようと試みるが栓は固く動じない。
「やっちまったッ…開かねぇじゃねぇか‥…」
ジャンの残念がる声にフィンは肩を落とす。
飲みなれない高級酒を用意したコニーとサシャは栓抜きまでの用意はなかった。
「あっ!!」
フィンはひらめいたように明るい声を出した。
「お?なんか思いついたのか?」
ジャンの瞳も輝く。
「うん!!」
フィンはそう言ってジャンの手から大きなシャンパンボトルを受け取る。
おもむろに少しシャンパンボトルと振り出す。
瓶の炭酸が白く泡立ち始める。