第1章 赤ずきん
「ダメだ…タケミっち。俺は…場地さんを殴れねえ…」
「お前何しに森に来たの!?」
場地が焦らすようにゆっくり近付いた次の瞬間、凄まじい早さで捕らえられた千冬は再び食べられてしまいました。
「千冬がまた喰われたー!もう一生喰われてろ!」
「千冬が取り込まれたか…動きが早いな」
場地だった何かに取り込まれた千冬。その様子を冷静に見つめマイキーは分析を試みます。
外見もどんどん凶悪に変化し、さらに強力になったオーラを感じます。それはまるで食べた者の力を吸収しているかのようでした。
不気味な薄笑いを浮かべる場地を見据えながら、マイキーは隣にいる武道に呼び掛けました。
「…どうする?タケミっち」
「いやどうするも何も、場地君だった何かを倒すしかないですよ」
目の前の場地は、もう狼というより異形の怪物に近いものでした。その大きく割けた口で今にも噛み付いてきそうな形相をしています。
「オレは…ダチとは戦えねえ」
「ええー!場地君だった何かにひよってる奴いる!?いねーよなあ!?」
「場地を連れ戻してくれ、タケミっち」
「無理無理ムリです!あんなのにどうやって立ち向かえって言うの!」
頼みの綱のマイキーに戦えないと言われ、焦る武道。そこへ場地が物凄いスピードで突進して来ました。
「うわあぁぁっ、来たー!」
目をつぶりましたが衝撃が来ないので薄目を開けてみると、武道が襲われる寸前でマイキーが攻撃をガードし盾となっていました。
「…マイキー君!」
そして場地の動きを止めた一瞬を狙い、マイキーのハイキックが炸裂します。
強烈な蹴りが場地の頭部にクリーンヒットし、その衝撃で血を吐いた場地の体が揺らぎ、腹部から千冬が転げ出てきました。
どうやら吸収した力を打撃や早さに回したようで、腹が修復しきれていなかったようです。
「千冬!大丈夫か!?」
「ああ…すまないタケミっち」
武道の手を借りながら千冬は立ち上がります。二人の前に出て、マイキーは目の前の怪物に呼び掛けました。