第1章 ハーデンベルギア
どうしてこうなったのか。
頭を整理する時間も貰えなかった。
矢継ぎ早に告げられた内容に混乱のまま頷いてしまい、気がついたら全く知らない土地の全く知らない人達と全く知らない文化の中で働くことになってしまった。
言い訳をさせてもらえるのであれば、ここ三日間まともに日に当たっていないので自律神経が確実に乱れていた。また食事内容も、お世辞にも栄養管理が行き届いているものとは言えず、脳がしっかり働いていなかった。コーヒーも飲んでいないから目も冴えてない。
私はカフェイン過敏症だから飲みすぎるのは良くないけど、逆に言うと少しでも飲めばとても効くという恩恵を受ける。そんな話は今はどうでもいい。
一言で言えば ”サイアク” である。
そして今私は、ひときわ背の低い男に「部屋に案内するからついてこい」と言われて建物の廊下を歩いている。
他に団長?らしいエルヴィンという人と、ハンジという人は途中で仕事があるからと別れてしまった。
窓から夕陽が差し込んできて眩しいが、久しぶりの陽の光は有難くすら感じる。
陽が沈む先を見るとそれは地平線ではなく、壁だった。それもちょっとやそっとの大きさではない。あんな大きな壁、少なくとも私が生きている中で見たことも聞いたこともない。巨大建造物と聞いて知っているのはせいぜいピラミッドやモアイが関の山だ。
本当に、いったい私はどこにいるのだろうか。
電車もない、タクシーもない、パソコンもスマホもない。その代わりに人を食べる巨人が存在して、人類は随分蹂躙されているらしい。戦う専用の兵団を設立するくらい。
漫画かアニメか映画の設定だろう?そんなバカな話があってたまるか。
そういえば持ち物はすべて没収されたが、大切にしてくれているだろうか?長い廊下を歩く最中、陽が半分壁に隠れて少し暗くなった。
廊下を抜けて階段を下りてまた廊下を歩いて、一つのドアの前でリヴァイと名乗った人の足が止まり、私も続けて足を止める。
ドアを開けて中に入るのでそのまま続くが、ベッドと机とクローゼットが設置されているだけの簡素な部屋だ。キョロキョロと見渡していると声をかけられた。
「ここがお前の使う部屋だ。綺麗に使えよ」
「…はい、どうも…」
この男はとにかく目つきが悪く、話し方もとても優しさを感じることは出来ない。ソルジャーの悪いところが出ている。
