第1章 ハーデンベルギア
「あの、私はここで生活するんですよね?」
「そうだ」
「…着替えとかは…」
「用意されてるらしい。中に入ってんだろ」
顎をクイッとあげてクローゼットを示された。不親切すぎてムッとした。表情に出てしまったかもしれない。
「ご飯とか、お風呂とか…どうしたらいいんですか」
「チッ…めんどくせぇ」
目をそらされたと思ったら、舌打ちと悪態ときた。一体どんな育ちをしたらこんな態度がとれるのか、ぜひ親の顔が見てみたい。
ふつふつと沸く怒りを抑えられるほど環境が良くなかった。まぁまぁ落ち着いてと言ってくれる友人も、愚痴を聞いてくれる同僚もここには居なかった。
「あの、私も好きでここに来た訳ではないので。帰ることが出来るなら、帰りたいんですよ!住むところを、提供して、貰えるのは…有難いと…思ってます、けど!」
話しながら涙が溢れてきて止められなかった。混乱している中で冷たくされて、もう限界だった。瞬きもしていないのにとめどなく涙が頬を流れていく。リヴァイという男は私が泣いたことがそんなに意外だったか、目を見開いて驚いていた。
「帰りたい…家に帰りたい…」
久しぶりに歩いたのと感情的になったこともあって眩暈がした。涙を隠したくて俯いた瞬間にくらっとして、体がよろめいたが倒れることはなかった。
腹部に緑のローブが纏う腕が回されていた。とても意外なことにリヴァイが支えてくれていた。
しかし沈黙はやめてほしい。
泣いておいてなんだが、人の意外な優しさに触れると少し冷静になってしまい、恥ずかしさがこみ上げてきて顔も上げられない。
「…すまなかった」
思わず「え」と声を漏らし、反射的に顔をあげてしまった。身長が近いもんだから想像以上に顔が近く、余計恥ずかしい状態になってしまってすぐに後悔した。
「…っ、私の方こそ、急にごめんなさい。あの、支えてくれてありがと…もう大丈夫です」
そういうと気持ちゆっくりだったような気もするがあっさりと離れていった。涙を拭う私を見る目は、心なしか今までのような値踏みする視線ではないように感じ、目を見るのも怖くなかった。
「…この後飯だ。食堂に行くからついてこい」
一応生活に必要なところを案内してくれるらしい。ここは意地を張ってもメリットがないので、有難くついていくことにしようと決めた。
ていうか、この人謝ったり出来るんだ。
