第89章 #89 新たな命
"天と地の戦い"と呼ばれたあの日から三年、途方もない数の命が奪われ生き残った人々も癒えぬ傷跡に苦しまれている事でしょう。
喪失の最中にある世界が危惧する通り、エルディア国はイェーガー派が取り仕切る『軍』を結成し軍備増強に力を注ぐ日々を送っています。
海の向こう側で生き残った人類の報復を恐れて島は一丸となり声を上げます。
勝てば生きる、負ければ死ぬ、戦わなければ勝てない。
戦え、戦え
エルディアと世界どちらかが消え去るまでこの戦いは終わらない、エレンの言った事は正しいのかもしれない。
それでもエレンはこの世界を私達に託す事を選んだ。
今、私達が生きている巨人のいない世界を
「兵長、何か面白い記事載ってる?」
青く晴れた空、その空を飛んでいく飛行船、街には人が行き交い人々の声が飛び交っている。
そんな中でファルコとガビに車椅子を押されながら新聞に目を通していたリヴァイ、ガビに問われたリヴァイは新聞をたたむとそれを背中の方へしまった。
「天気予報見た」
「天気!?それだけ?!」
「今日は一日天気ですよ」
彼らの少し前を歩いてそう言ったのはオニャンコポンだった。
「波が荒れなきゃいい」
「そうですね、アルミンさん達、無事に着くといいけど…」
ファルコが空を見上げた。
アルミンを始めパラディ組と、アニ、ライナー、ピークは和平交渉の連合国大使としてパラディ島へと向かったのだ。
リヴァイもどうするかと問われたが、リヴァイはパラディ島へ戻る事を選ばなかった。
もう静かに暮らしたい、と。