第89章 #89 新たな命
「鳥?」
リリアはその鳥を見ると「あっ」と声を上げ窓を開けるように言った。
窓の近くにいたジャンが窓を開けるとその鳥は部屋に入り、リリアの肩に止まり抱かれた赤子を見ていた。
「何だ、この鳥」
「この鳥はエレンだよ!」
「へ?エレン?」
「うん!約束したの。どんな姿になっても必ずおめでとうを言いに行くって。ね?エレンでしょ?あなたが世界中を敵に回しながらも守ってくれた子が無事に生まれたよ!エレン、見て?」
するとその鳥はピッピッと鳴きリリアの頬に頭を擦り寄せ再び飛ぶと今度はリヴァイの頭の上に止まった。
「オイオイオイオイ、テメェどこに止まってやがる」
その鳥は一回リヴァイの頭を突いた。
「いてぇ!!」
「あはは!!おめでとうって!」
「はい、ここまでですよ。皆さんは部屋を出て!リリアさんを休ませてあげて下さい」
パンパンと手を叩きイェレナが皆に声を掛ける。
部屋はリリアとイェレナ、エルヴィン以外いなくなり、静かになった。
「イェレナ」
「はい?」
振り向くとリリアが両手を広げている。
「……何です?」
「ハグ!」
「私とです?」
「うん」
意味が分からないままイェレナが近付くとリリアがギュッと力一杯抱きしめた。
「イェレナがいてくれてよかった。ありがとう」
「…完全に手探りだったんですが無事に生まれて良かったです」
優しくリリアの背中を叩く。
その表情はとても優しいものだった。
こんな事経験がなくて内心不安だらけだったが
あなたの役に立てたなら良かった。
そして二人に愛されたこの子が健やかに成長する事を心から祈ろう。