第89章 #89 新たな命
イェレナは小さな小さな赤子を優しく抱き、リリアの顔の近くに寄せた。
体全体で息をしながらリリアがたった今生まれてきた自分の子供を見つめる。
「おめでとうございます。皆さんの予想通り男の子ですね」
「あはは……良かった……無事に生まれて……エルヴィン、ようやく会えたね。イェレナ…リヴァイにも…」
イェレナは体を起こすと小さなエルヴィンをリヴァイに抱かせようとしたが、抱き方が分からないのかリヴァイの手がなかなか前に出ない。
「ど、どうやって抱けばいい」
「こうやって頭を持って……」
イェレナがゆっくりエルヴィンをリヴァイの腕の中に上手に収めていく。
手を離し完全にリヴァイだけでエルヴィンを抱くと、リヴァイは額をエルヴィンの顔にくっつけた。
「お前のおかげでリリアを死なせずにすんだ……何度も助けてくれてありがとうな…。俺達の所に来てくれて……ありがとう…」
リリアとイェレナが顔を見合わせ笑う。
するとリヴァイはリリアを見つめると膝をついた。
「リリア……ありがとうな……よく頑張ってくれた」
「うん」
「小せぇ……軽い…」
リヴァイはリリアにエルヴィンを預けると、緊張の糸が切れたのか大きく息を吐いていた。
するとドアが少し開き、ガビが顔を覗かせた。
「あのぉ…入ってもいい?リリアさん、どう?」
「ガビ、みんな、入っていいよ。無事に生まれたよ」
リリアがそう言うと皆が一斉に部屋へと入ってきた。
おめでとう、お疲れ様という言葉が飛び交い一瞬で部屋が賑やかになる。
リリアの抱いているエルヴィンを交互に見て皆笑顔だった。
するとコツコツとどこからか音がし、窓を見ると一匹の鳥が窓を突いているのが見えた。