第89章 #89 新たな命
「兵長落ち着きましたか?」
「あぁ」
「陣痛の間隔が短いのでそろそろですよ。側にいてあげて下さい」
ガビとファルコが手を離すとリヴァイはゆっくり立ち上がったが、その表情は緊張でかいつもよりも固い。
部屋に入ると痛そうな顔をしてリリアがリヴァイの方を見ていた。
「リリア、大丈夫か」
「今は……あー……でもまた来そう」
「もう生まれますよ」
リヴァイはリリアの隣に腰を下ろすと手を握った。
それを見たイェレナが太く丸めたタオルをリヴァイに差し出す。
「お産が始まったら手を離してこれを握らせて下さい。そのまま手を握っていては彼女の握力で骨がバキバキに折れますよ」
「……そんなにか…」
「そんなにです。お産がどれだけ痛いと思ってるんです。加えてリリアさんの握力はとんでもないですから兵長の手の骨なんて一発ですよ」
口をへの字に曲げるとリヴァイはリリアの手をさらに強く握った。
「変わってやれるなら変わるのにな」
「ねぇねぇリヴァイ、お産って男の人が体験すると死ぬらしいよ」
「………凄い事なんだな」
すると握っていたリリアの手に力が入り出し、急に顔を歪め始めた。
どうやら始まったようだ。
「あー……痛い……」
「兵長、少し下がって下さい。さぁリリアさん、頑張りましょう」