第87章 #87 私は生きる
「私達なら会ってくれる、そう思ったんでしょ?全然ズルくないしむしろ嬉しい」
「……」
「もう終わったんだよ。つらい戦いも……『今は』だけどね。そりゃあ思う所も色々あるだろうけど、もうイェレナも終わりにしよう?生き残ったんだから、しっかり生きよう?」
「誰も私が生きる事を望んではいません」
「誰がそんなこと言った?」
グイッと両手を引っ張られ、イェレナは目を見開いた。
真剣な眼差しを向けられ、逸らしたいが逸らせない。
「イェレナが生きる事を否定する奴がいたら私がぶっ飛ばしてあげる!!」
「……どうして……そんなに親しくもなかった私に…そこまで優しくするんです?意味が分からない…」
「じゃあどうしてそんなに親しくもなかった私達に会いに来たの?」
イェレナが固まる。
「私達なら会ってくれるかもって思ったんでしょ?寂しいから受け入れてくれる誰かを必死に探したんでしょ?そりゃあ見ず知らずの人が来たら流石に驚くけどさ、イェレナとは4年間パラディ島で暮らしたんだから…敵だったかもしれないけど、あなたが私を求めるなら私はちゃんと受け入れるよ」
ギュッとリリアが強くイェレナの手を握りしめる。
その手はとても暖かい。
「パラディ島から船で逃げる時、イェレナは誰よりも先に私を助けに来てくれた…あのリヴァイよりもだよ?イェレナの心を動かす何かがあって私を少しでも認めてくれてたなら嬉しい…そんなイェレナが私に会いたがってくれたなら受け入れるに決まってるでしょ?」
「リリアさん……」
「生きよう?大丈夫、一人じゃないよ」
ボロボロとイェレナの瞳から涙が溢れた。
嗚咽を漏らし体を震わせるその姿は、かつてのイェレナからは想像出来ない弱々しい姿だ。
リリアは彼女を優しく抱きしめるとポンポンと背中を叩いた。