第86章 #86 誰が為に心臓を捧げる
「えっとリヴァイ、お腹空いてない?3日も食べてないでしょ」
「いや、今はいい」
「そう…」
リヴァイはリリアの髪の毛をそっと撫でた。
「ひゃっ?!」
「少し落ち着け、どうした」
するとリリアはリヴァイにゆっくりと抱きつき、背中に手を回してギュッと力を入れた。
リヴァイの体が温かい、生きている。
「……このままリヴァイが起きなかったらどうしようかと思ってた」
「そう簡単に死なねぇ」
「だって……3日も眠り続けるなんて初めてだったから…怖くて…でも皆の手前…弱音吐けないし…」
「リリア、顔上げろ。しっかり俺に顔見せろ」
そう言われリリアはゆっくり顔を上げリヴァイを見た。
目の下にはクマが出来、疲労が表情に出ている。リリアも寝ていないのだろう。
今にも泣きそうなその顔にリヴァイは苦笑いをする。
「バカ…泣くなよ?」
「……約束出来ない」
リヴァイはリリアの前髪を優しく払うと、額にそっと口付け再びギュッと抱きしめた。
暫く余韻に浸りながら離れるとリヴァイはソッとリリアのお腹に触れた。
「無事に生まれてくるといいな」
「そうだね……エレンが…」
「ん?」
「エレンがね、この子が生まれたら絶対に会いに行きますって…必ずおめでとうを言いにくるって……どんな姿になっても…」
そうか、と返しリヴァイは再びお腹を撫でる。
「……あの戦いの中、お前を案じて生かそうとした命だ。きっとアイツも喜ぶだろ」
「うん……」
するとリヴァイは深く息を吐きながらベッドに深く座り直した。
おそらく言わないだけで体は辛いのだろう。