第86章 #86 誰が為に心臓を捧げる
「とにかく金髪が目に入りゃ大丈夫だろ。んで手とか握りゃ完璧!寝ぼけてるだろうし」
「えぇ?絶対にすぐ分かるよ。だって今のリリアさんは銀髪だし」
「寝ぼけてるから大丈夫だ!」
その時だ、リヴァイからうめき声が聞こえた。
意識が3日も戻らなかったのに、何故リリアがいなくなった今、意識が戻ってしまったのか。
アルミンが冷や汗を流す。
するとジャンとコニーがアルミンの肩を叩いた。
作戦通りにやれ、と。
アルミンは二人を睨むとリヴァイの顔を覗き込み、手を握る。
リヴァイの目がゆっくり開き、目だけを動かし辺りを見ている。
ここが何処なのか確認をしているのだろう。
うっすら見える人影、ボンヤリ見える金の髪、リリアと思ったのかリヴァイは少し握られた手に力を込めた。
(ホラ!寝ぼけてるじゃん!アルミン、何か声かけろ!)
えぇ、とアルミンは慌てたが小さくリヴァイに声を掛けた。
「えっと……もう大丈夫、リヴァ……ぶっ!!!」
ゴッという音と共にアルミンの顔がベッドにのめり込んだ。
意外に早く意識がハッキリしアルミンに気付いたリヴァイが、アルミンの頭を掴みベッドに押し付けたのだ。
「……リリアはどこだ…」
「もうバレてんじゃん…」
するとアルミンがゆっくり顔を上げ口を開いた。
「リリアさんならいません……もうリヴァイ兵長の手では届かない所へ行ってしまいました…」
誤解を招く言い回しにコニーとジャンの口が引き攣る。
言っている事は間違いではないのだが。
アルミンの逆襲だ。
「可哀想に……あと数十分早く目覚めていれば……リリアさんと会えたのに…」
「なん……だと?オイ……一体何があった?!リリアは……生きていたはずだぞ?!」
「でも……今はいないんです」
「どういう事だ!!オイ!!リリアは……リリアはどこに…」
リヴァイがアルミンの胸倉をグッと掴んだその時だった。