第85章 #85 真相
「リリア兵長がいなかったらウォール・マリア奪還戦の時リヴァイ兵長は団長が死んでしまった後、抜け殻のような状況になってしまう。ジークを討つという目的があったとしても心がそれについて来ない可能性がありました。リリア兵長がいる事でエルヴィン団長の残した大事な人を今度は自分が守らねばという目標が出来ます」
「リヴァイの未来の糧となるため?」
「そうです。リヴァイ兵長はミカサがもたらす未来に必要な人です。勿論リヴァイ兵長にとってもリリア兵長は未来愛する大事な人、だから巨大樹の森でリリア兵長が死んではいけなかったんです」
リリアを生かす事はリリアのためではなくリヴァイの未来のためという事、だからエレンは気を悪くしないでと前置きをしたのだ。
でも、とエレンが何故か恥ずかしげに言葉を続ける。
「その……もう一つ理由があって…これはもうオレの…私欲なんですけど…」
「ん?」
「リリア兵長の存在はオレにとってその……かなり癒しだったので……死なせたくなかった」
パチパチと瞬きをしてリリアはエレンを見つめた。
顔を真っ赤にしたエレンは恥ずかしそうに頭を掻いて俯いている。
「オレをいつも心配してくれて…優しくて……本当に姉のように思っていました」
「エレン…」
「レベリオで…リリア兵長と一緒に行く道も考えたんです。でもそれじゃあやっぱりリヴァイ兵長の戦力が落ちてしまうので……あんな骨を折る選択を……ごめんなさい」
「もういいの…」
エレンは視線を上げるとリリアを見つめた。
「全ての戦いが終わったら巨人の力は無くなります。だからリリア兵長が出産してお腹の中の子供と繋がりがなくなっても、リリア兵長は巨人にはなりません。安心して産んでください」
「エレン……」
そっとエレンがリリアのお腹に触れる。
その表情はとても柔らかだった。