第80章 #80 エレンの居場所
それはまだパラディ島がレベリオを襲撃する前の事、イェレナとエレンは密会し、今回の安楽死計画の順序を話し合っていた。
『世界連合艦隊がパラディ島制圧に乗り出すとすればこのカリファ軍港に集結するはずです。レベリオ襲撃後…およそ1ヶ月の猶予を与え連合軍をここに集結させた後、ジークと接触を果たし始祖の巨人を二人で手中に収め、シガンシナ区外壁分の巨人数百体で連合軍は問題なく撃退できるはずです』
『……敵の攻撃目標はそれだけか?それで何十年もパラディ島は手出しされないのか?』
『戦艦を失った国は財政破綻まで追い込まれます。主要国の全てがそうなれば十分すぎる打撃となるでしょう』
少しだけ沈黙し、イェレナはトントンと地図上のとある場所を指した。
『……強いて言えばマーレ大陸南にある砦、飛行船の研究基地が少し気になります』
「おそらくそこが…エレンの第二攻撃目標」
「スラトア要塞。確かに…少しでも始祖の巨人に攻撃できる可能性のある兵器の存在を知っていれば…」
「カリファ軍港の次に向かうでしょう。飛行船を潰しに」
肩で息をしながらイェレナは次に向かうであろうエレンの居場所を伝えた。
ここまですんなり話すとは誰も思っておらず正直驚いた。
「えらく従順に答えたな…」
リヴァイが呟きイェレナをじっと見る。
ここまで素直に話すのは何か企みがあるのだろうか、それともただ単純に話す気になっただけなのだろうか。
「皆さんに頼みがあります。……認めてください」
皆がイェレナを見つめる。
「ジークは敗れた…でも正しかった。二千年に及ぶエルディア人問題の解決策は『安楽死計画』しか無かったのです。この惨状を見ればお分かりでしょう」
「あぁ、認めるよ。エレンに何の解決策も…希望や未来を示せなかった私の無力さを」
そう言い俯いたハンジの手をリリアが握り、首を振った。
「誰も示せなかったと思う……こんなの……私だってエレンに何も……」
こんなやり方は間違っている、そう言いながら自分もエレンに解決策を言えなかった。
きっと誰一人、見出せなかったろう。
ハンジはリリアの頭を抱くと自分に引き寄せた。