第78章 #78 世界で一番愛してる
「イェレナ?」
リリアが体を揺する。
彼女の顔は真っ赤で、熱があるようだ。
おそらく骨折から来ているのだろう。
「イェレナ大丈夫?しっかり!」
「ハンジ……さん」
イェレナがハンジを呼ぶ。
「何だい?」
「リリアさんを……責めないでください。彼女が勝手な行動をしたのは……私のせいです。我々が船に乗れたのは…彼女のおかげでもあります…。だから…どうか責めないであげてください」
「……それはリリアの話を聞いてから決める。でも覚えておくよ。イェレナ、リリアを助けてくれてありがとう」
するとハンジが皆を見渡す。
何故オディハに向かう事になったのかをライナーやアニに説明しなくてはならない。
きっと、つらい報告になる。
「オディハへの航路はマガトと私達で決めた…というより他に選択肢が無かった。君達の故郷…レベリオを救う道は…どこにも無かった」
やはりそれを聞いたアニは絶望的な表情をしていた。
無理もない、父親に会いたいがためにここまでやってきたのだ。
それなのにレベリオを救う事がもう出来ないとは。
「…だったらもう…私が戦う理由は無くなった…私は降りる」
「例え…今すぐ地鳴らしが止まったとしてもレベリオもマーレも壊滅状態は免れない。それはマガトも分かっていたよ。だが彼は命を賭して私達を先へ進めた。それはレベリオやマーレのためじゃない」
アニはハンジを見つめた。
「名も知らぬ人々を一人でも多く救えと、私達に託すためだ」
「だとしたら最初の疑問に戻るけど…あんたにエレンを殺せるの?私が…エレンを殺そうとするのを…あんたは黙って見てられる?」
ミカサやアルミン達は言葉が出ない。
心のどこかでまだエレンとは話し合いが出来るのではないかと思っている。
本当は殺したくなんかないのだから。
「もう…戦いたくない、あんたと…殺し合いたくない。あんた達とも…エレンとも…」
暗い空気が漂う中、ハンジは息を吐くと皆に言葉をかけた。
「とりあえず……今は体を休めよう」
はい、と皆が出ていく中、ハンジはリリアを引き止めた。