第77章 #77 私は強い
そしてついにリリアは兵士達の集団に飛び込んだ。
至近距離で腕や足を撃たれ、それでも痛みを堪え目の前の兵士達を一人、また一人と確実に倒していくリリア。
その姿に兵士達が怯み、数人は逃げ出す者もいた。
ハンジは支えていたピークから手を離すと、駆け寄ろうと一歩前に足を踏み出した、その時だ。
リリアが叫ぶ。
「早く乗れぇぇぇ!!!」
そしてついに最後の一人の兵士に跨りブレードを振り上げると、その兵士は泣きながらリリアに懇願した。
「殺さないで…リリア兵長…!俺には…待ってる家族が…」
兵士の言葉にリリアの動きが止まった。
しかしそれが仇となる。
兵士はその隙を見逃さず、リリアに向かって装備していたブレードを突き上げた。
リリアは避けようと首を横に傾けたがブレードはリリアの首筋をえぐるように斬った。
その瞬間リリアの首から血が噴き出し下にいた兵士を濡らす。
「ひ……ひぃ!!!」
一瞬ふらついたリリアだったが首元を手で押さえると、鬼のような形相で容赦なくブレードをその兵士に突き立てた。
追いかけて来ていた兵士は一人もいなくなり、その亡骸の真ん中でリリアが一人、佇んでいた。
「リリア……」
皆、その場から動けない。
助けに行きたいのに足が前に出ない。
船にいた者達も固まっており、イェレナもそのリリアの姿を見ていたが、開いた口が塞がらず見つめる事しかできなかった。
私が……
あの子にこんなことをさせたのか
あの大人しく、人を傷つける事の出来ない弱そうな彼女が
一瞬で、一人で数十人の兵士を倒してしまった
"良かったじゃないですか。これでリリアさんが兵士達を一掃してくれますよ"
全然良くない
私は……優しいあの子になんて事を……