第9章 #09 女型の巨人捕獲
後方でエレンの声が聞こえる。
おそらくリヴァイの予想した展開になっているのだろう。
リリアとしてはこのまま進みたい。
しかしリヴァイは選択をエレンに任せると言った。
もしここでエレンが巨人になったら作戦は失敗だ、ここであの女型と戦う事になるだろう。
「エレン、お前と俺達の判断の相違は経験則に基づくものだ。だがな、そんなモンは当てにしなくていい。選べ、自分を信じるか、俺やコイツら調査兵団組織を信じるかだ」
リヴァイの言葉にエレンは前方を走るリリアを見た。
何故リリアが自分達の前を走っているのか、それはきっと何か理由があるのだろう。
リリアは、いや、彼らは何かをしようとしている。
「俺には分からない、ずっとそうだ。自分の力を信じても、信頼にいたる仲間の選択を信じても、結果は誰にも分からなかった。だから、まぁせいぜい悔いが残らない方を自分で選べ」
エレンは迷った。
どうすればいい、自分で戦うのか、それとも仲間を信じこのまま進むのか……
するとペトラがエレンに声をかけた。
「エレン!!信じて……」
エレンはペトラの手を見た。
そこには手を噛み切った歯の痕が付いている。
エレンがなかなか巨人化できず誤って巨人化した際、刃を向けた自分達の頼りなさを謝罪した時に手を噛み切った痕だった。
エレンを頼っている、だからエレンも自分達を頼って欲しいと、彼らはその時エレンに言った。
その言葉がエレンの頭の中によみがえる。
「エレン!!遅い!!さっさと決めろ!!」
リヴァイが叫ぶ。
エレンの迷いが馬のスピードを変えてしまう。
そうするとリヴァイとリリアの距離の取り方が難しくなるのだ。
巨人化するならその判断に従うが、しないのならば作戦を成功させなければならない。
エレンは迷い、迷って決断した。
「進みますっ!!!」