第76章 #76 証明するために
「今…何て言った?」
「…ですから通常は飛行艇を飛ばすための整備工程に1日を要します…十分な設備さえあれば…半日で飛ばせてみせますが」
「…半日だと?それまでここを敵から守り続けろと言うのか?!敵はいくらでも増援を送ってくるぞ…数時間しか保たない巨人の力で制圧し続ける事など…」
ハンジが振り返る。
その表情は絶望的だった。
「間に合わなかった」
「……」
「『地鳴らし』の進行速度は馬の駆け足よりも速いくらいだった。それも障害物を無視して進むから…半日もあれば巨人が上陸した海岸からおよそ600kmは…被害に…すべての大陸を踏み潰すまでには4日かかるだろう…」
リリアがハンジを見つめる。
「最善の手でエレンを止められたとしても…レベリオは既に…間に合わない」
ジャンが脱力した。
もうレベリオは壊滅している、自分達と楽しく酒を交わしたあの民族の者達を助ける事が出来なかったのだ。
「そんな…」
「飛行艇が飛んだところで…エレンの位置が分からない。時間はさらにかかる…そもそもここで半日持ち堪える事も…不可能だ。これは…」
するとキヨミが口を開いた。
「考えがございます。ここより南のマーレ海岸都市オディハにアズマビトが所有する格納庫があります。そこでも飛行艇の整備は可能です。すぐさま船で飛行艇を牽引したまま出港しオディハにて飛行整備を完了する手があります」
「マーレ海岸?距離によっては…ここから地鳴らしで壊滅する都市じゃ…」
「オディハは地鳴らしより先回りする距離にありますが、さらに半日保つかは…賭けになります」
「…賭け」
ここで悩んでいても仕方がない、こうしているうちに巨人はどんどん進行していく。
賭けにはなるがもうこの方法しかないのだ、やるしかない。