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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第74章 #74 友の言葉



『レベリオであなたにまんまとやられたからね…イェレナ。あなたの過去を洗いざらい調べて驚いた。ごく一般的なマーレ人家庭の出自をマーレに併合された小国出身と偽った。ジークと初めて出会った時からマーレに失望していたあなたは、ある物語を作り出した』
「………」
『それは王子様と世界を救う奇跡の物語、自らを嘘で塗り固め人類史に刻まれんとする、その欲深さに敬服いたします』

イェレナは鼻で笑うと車力のピークを撫でた。

「フッ。まるで自分は違うと言わんばかりですね。一体私とあなた達の何が違うと言うのでしょう。世界を救う、これ以上に人を惹きつける甘美な言葉があるでしょうか?」

皆は言葉が出ない。

『何億もの命を救うという崇高な胸の高鳴りに身を任せ、これまでの遺恨などなきもののように喉へと流し込む。それが今、私の目に映るあなた方の姿です。少し思い出して見ませんか?」


するとイェレナは順に皆の事を話し始めた。
ライナーには壁に穴を開けたせいでどれだけのエルディア人が無垢の巨人に殺されたか。
そのまま壁内に侵入し、ここにいる仲間と苦楽を共にし、裏切り、殺し合い、再び仲間と装うのかと。

アニには調査兵団を随分と殺し、ストヘス区の住人を踏み潰した事、そしてアルミンには、普段は良識人なのにレベリオでは軍港を派手に破壊、民間人も含めて死体の山と戦果を上げたかという事。
そしてジャンは車力を討つためにファルコに雷槍撃ち込んだ事、さらにはガビがサシャを撃った事、どれも皆の胸中を抉るものばかりだ。

辺りには暗い雰囲気だけが残る。


「イェレナ…私達はここで結束してエレンを止めなくちゃいけないの。皆んなの心を乱すような事は…言わないで」

リリアがそう言うとイェレナはリリアを見つめた。

「名ばかりの兵士長様が上から目線で何を言っているんです?」
「は?」

その言葉に反応したのはハンジだった。

「若い兵士達は結構言っていますよ。リリア兵長は実力もない名ばかりの兵士長だと。兄の七光りだとね」
「………」
「ちょっと待って、それは聞き捨てならない」
「ハンジ、別にいいよ」
「良くない!!」

珍しくハンジが声を荒げた。

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