第74章 #74 友の言葉
「あぁ…やめよう。見たわけでもない二千年前のいざこざ話なんて退屈だ」
するとようやく二人は言い争うのをやめた。
「ジャン、元帥殿は私達の存在に困惑しておられるのだよ、この島を根絶やしにしようとした世界の人々を、楽園を捨ててまで助けようとする奇怪な悪魔の存在に」
「……」
「私達は…外の世界で数ヶ月暮らした。もう何も知らない悪魔には戻れない」
すると今度はアニが口を開く。
「それで、あんた達に殺せるの?」
「…え?」
「エレンを殺せるの?」
「エレンを止める方法は殺すだけじゃない…」
ミカサの答えにやはりか、と言いたげにアニはため息をついた。
「あんたならそう言うと思ったけど…それじゃ何?説得でもするの?それで考え直すくらいの奴が人類大虐殺なんて実行する?」
「それは分からないよ、エレンと話してみないと…」
アルミンがアニに返す。
本心はまだエレンとは戦いたくない、話せば分かってくれるのではないか、そんな気持ちがどこかにある。
「じゃあ対話が可能だとして…それでも虐殺をやめてくれなかった時はどうするの?エレンが敵だとアホになるから分からないの?」
アルミンやミカサ、ジャンやコニーからの返答はない。
リリアも何と返せばいいのか分からず黙って彼らの話を聞いていた。
説得出来たのならもうやっているし、出来なかったからこうなっている。
しかしまだ可能性がないと思いたくない。
エレンなら分かってくれる、そう信じたい。