第74章 #74 友の言葉
暫くし、後少しでシチューが出来上がりそうになったところでリリアは皆を呼んだ。
焚き火を囲み皆が集まる。
ハンジとリリアはシチューの仕上げにかかっているが他のメンバーは黙り込み、静かにシチューが温められている焚き火を見つめていた。
明らかに空気が重い。
「誰が手伝ってくれないかな?睨み合ってないでさ…」
そう言われても誰も手は貸さず、ハンジは大きく息を吐いた。
するとマガトが口を開く。
「フッ…散々殺し合ってきた者同士で飯を囲むか…。面白いな、どうして気が変わった?エレン・イェーガーを放っておけばお前達が望む世界が手に入るのだぞ?島の悪魔共の楽園がな」
マガトはそう言うと視線を壁内組に向けた。
「我々はあと少しの所でエレンとジークの接触を阻止できた…お前らが手助けをしなければな」
「説明した通りだよ元帥殿。私達は虐殺なんて望んでない。じゃなきゃコソコソ森に逃げ隠れてシチューなんか作ってないよ」
「つまり正義に目覚めたというわけか…」
その言葉にジャンが反応した。
「……正義だと?今…正義を語ったのか?あんたが?」
リリアが心配そうにジャンを見上げる。
何やら言い合いが起こりそうな雰囲気だ。
「あんたらが送り続けてきた巨人に抵抗してきた俺達が悪だったのか?!いいか?!俺達が必死に戦ったのは巨人に食い殺されたくなかったからだ!!それが悪魔の所業だって言いてぇのかよ、おっさん!!」
「あぁ、お前達は悪魔に見える。パラディ島脅威論は現実となり今や世界は滅びつつある。お前らが必死に戦った結果がこれだ…違うか?」
「あのなぁ…そもそも壁破られて目の前で母親が食い殺されていなきゃなぁ…!エレンはこんな事してねぇよ!!地鳴らしまで追い詰めたのはお前らだろうが!?」
「おい、今更歴史の話をしようっていうのか?先にマーレを苦しめ蹂躙したのはエルディア人だって事くらいは理解しているんだろうな?」
「二千年も前の事でいつまで被害者面してやがる!?」
ジャンとマガトの言い争いは止まらない。
困ったようにリリアがハンジを見ると、ハンジはリリアの頭をポンポンと叩いた。