第74章 #74 友の言葉
焚き火の前に置かれている鍋を覗き込むリリア、ハンジが大量の食糧を運び鍋の前に置いた。
食事の手伝いなど何年ぶりだろう。左腕を無くしてから全くしていないため4年は料理などしていないし、腕があったとしても不器用なため止められていた記憶がある。
「じゃあリリアはこの芋の皮を剥いて鍋に入れてね」
「芋!」
今の皮剥きと言えば昔グンタから教わった。
結局手元が危ないからと芋を大きいまま鍋に入れ、リヴァイに出した記憶がある。
「よぉし!!剥くぞ!」
グッと力一杯ナイフを持った瞬間にハンジから手首を握られた。
「待った待った!!そのナイフの握り方はおかしい!」
「ん?」
「何で刃が下向いてんの!?それは誰か刺す勢い!」
「……間違えた!」
するとクルンっと片手で回して刃の向きを変えたリリアにハンジが固まる。
不器用な筈なのにこういう動きは凄く器用だ。
「リリアってご飯どうしてたの?」
「小さい頃はお兄ちゃんが作ってくれたよ」
「でもエルヴィンは訓練兵になるために家出たでしょ?それからは?」
芋の皮を少しずつ剥きながらリリアは答える。
何度も手を切りそうになり、ハンジは隣でハラハラしていた。
「市場でもう出来てるやつ買った。お兄ちゃんが調査兵になった時はナイル兄ちゃんが憲兵に行ったから、それからはナイル兄ちゃんの奥さんに作ってもらったり」
「なるほど、料理経験0か!あれ?訓練兵の時に炊事なかった?」
「あったけど、お前邪魔だから引っ込んでろって同期から除け者にされてた」
ハンジが寂しげな表情をする。
あまりリリアの訓練兵時代の話は聞いたことはないが、あまり同期には馴染んでいなかったようだ。
「無事に全部終わったらさ、リリアに料理教室開こうかな」
「ホント?頑張るよ!!」
嬉しそうに笑うリリアにハンジは何故か胸が痛くなった。