第71章 #71 分かれ道
「リリア兵長、もう戻りましょう。体に障りますから」
ジャンがリリアの肩を支える。
リリアは泣き止む様子がなく、静かに静かに泣き続けた。
「……なんか喉渇いたなぁ。そうだ、あったかい飲み物でも飲もうかな。な?ミカサ、お前も喉渇いたろ?」
「え?あ、うん。渇いた」
「リリア兵長もいかがですか!飲み物!飲みましょう!!」
するとようやくリリアが顔を上げた。
ほら、とリリアの手を引くジャン、その後ろにミカサが続く。
子供のように泣くリリアをこのまま1人には出来なかった。
暗く、誰もいない休憩室に灯りを入れ、ジャンは温かな飲み物を作るとそれをミカサとリリアに渡した。
会話はなかった、何も。
ただ1人でいるよりはいい。
暫くするとリリアは机の上に伏せ、眠ってしまった。
ミカサが薄い布をリリアの背中に掛ける。
「なぁミカサ。リリア兵長をここに置いていって大丈夫と思うか?」
「………」
「そりゃあ身の安全は確実だけどよ……リリア兵長の精神面が不安でならねぇよ」
「そうね……」
「ハンジさんに置いていかれてこれだ。今だって俺達がいるから何とか……それがこの先親しい人も誰一人いない、子供の事もある、1人にさせていいのか?心が壊れねぇか?エルヴィン団長が死んだ時みたいに…」
あの時はリヴァイが四六時中側にいたから何とかなった。
しかしここから先、選ぶ道によってはもうリヴァイも側にいない、アルミンやコニーの選択によっては気心知れた仲間は誰もいなくなる。
そんな状況にリリアが耐えられるだろうか。