第71章 #71 分かれ道
「明日までに決めてくれ。今返事は求めない」
「明日……」
「もし我々と来る方を選んだならミカサとジャンから作戦を聞いてくれ。2人には説明済みだ」
ハンジは立ち上がるとリリアの肩に手を置き、見つめた。
「決めるのはリリアだ」
もう行ってしまうのだろう。
ハンジは荷物を持つとドアのほうに向かって歩き出した。
慌ててリリアも立ち上がりハンジを追う。
「もう行くの?」
「あぁ。見つかるとマズイからね。置いてきてるリヴァイの事も心配だし。それじゃあジャン、ミカサ。アルミンとコニーの事はよろしく頼むよ」
「はい」
するとリリアがハンジの服をギュッと握った。
今にも泣き出しそうな表情をしている。
ハンジは抱きしめてあげたい気持ちをグッとこらえ、服から手を優しく離させた。
「それじゃあリリア、行くね」
「ハンジ……」
ポンポンと頭を叩き、ハンジは手を上げてその場から離れだした。
グスッグスッと鼻を啜る音が聞こえ、それはのちに小さな嗚咽へと変わる。
チラリと後ろを見るとリリアは泣いていた。
まるで小さな子供が置いていかれるかのように。
「ハンジ……ハンジ………」
本当は振り返って強く抱きしめたい。
そしてそのまま連れて行きたい。
しかしそれはリリアのためにはならない。もう1人の体ではないのだ。
ハンジは心を鎮め、シガンシナ区から離れていった。