第71章 #71 分かれ道
リリアの涙が止まらない。
ハンジの言う通りだ。親からの愛情は知らない、でもエルヴィンからはたくさんの本当にたくさんの愛情を貰った。
それを自分の子供に与えてあげたらいいのだ。
するとジャンが声を上げた。
「俺も!!リリア兵長とリヴァイ兵長の子供に会いたいっす!!困った事があったら何でも手伝うんで!!!」
「私も」
うんうん、とミカサも頷いている。
「ジャン……ミカサ……ありがとう。ハンジも……ありがとう」
ハンジは優しくリリアの頭を撫でた。
もう大丈夫、リリアの不安はきっとなくなった。
しかし次は現実的な事を言わねばならない。
この先の事だ。
たった今リリアとリヴァイの子供に会いたいと言ったものの、選択によってはここでお別れになる可能性がある。
「さてと、それじゃあこの先の事もリリアと話し合わないとね」
ハンジは椅子に座り直すと再びリリアに向かい合った。
「先程ミカサとジャンとも話したんだけど、私達はエレンを止めに行こうと思っている。そのために車力の巨人とマーレ軍の元帥と手を組む事が出来た」
「車力……」
「ミカサとジャンも一緒に来てくれる事になった。アルミン達にも声を掛けてもらう。ただリリアは…大事な時だから私から付いてきて欲しいとは言わない」
リリアは寂しげな顔をした。
今、身体を大事にしなければいけない事は分かっている。
しかし皆と離れるのはつらい。
「我々と共に来ると命の保障は出来ない。例え生き残れたとしてもパラディ島にとっては反逆者だ。もう二度と戻れないだろう」
「………」
「お腹の中の子供の事を考えても本当はリリアは残るべきかもしれない。でもそれも強要はしない」
「…リヴァイはなんて言ってた?」
「悔いの残らない方を選べ、と」
そう、とリリアは視線を下げた。
どちらを選んでもリヴァイは受け入れてくれるだろう。だが少しだけ『来い』と言われなかった事が寂しい。
このまま一生会えなくなるかもしれないのに。
しかしリヴァイのリリアに生きて欲しいという気持ちも良く分かる。
だから悩んでしまう。