第71章 #71 分かれ道
「私はきっと…同じ事を自分の子供にしてしまう……身体が、記憶が親というのはそうだと思っているから……きっと子供を殴ってしまう、蹴ってしまう…ご飯を与えなかったり毎日泣かせてしまう!だからこんな私は子供を産む資格なんてない……産んじゃいけないの…」
「…リリア」
「産みたくない……産みたくない…!!怖い!!私は……親になりたくない……リヴァイに愛想を尽かされるかもしれない、嫌われるかもしれない…でも……それでも悲しい命を…産みたいとは思えない…」
部屋にリリアの嗚咽だけが響く。
ジャンもミカサも言葉が出ない。ここまでリリアが悩み、苦しんでいたとは思っていなかった。
するとハンジはゆっくりとリリアの手を取った。
「リリア、私はそうは思わないよ。確かにリリアは小さい頃、両親から虐待を受けてつらい目にあった。それを自分の子供にしてしまうのではないかと不安になるのは分かる。でもね、私は大丈夫だと思うんだ」
「……え…?」
「確かに両親との思い出はそんなものばかりだったかもしれない。でもエルヴィンに保護されてからはどうだった?エルヴィンと一緒にいた時は幸せだっただろ?悪い事をしたら叱ってくれて、でも良い事をしたらたくさん褒めてくれただろ?一緒に笑って、ご飯を食べて、お風呂に入って、抱きしめ合いながら眠りについて、凄く凄く幸せだっただろ?」
リリアはハンジを見つめた。
「だからリリアはエルヴィンが大好きだっただろ?本当の親から貰えなかった愛情を、エルヴィンは10倍、いや100倍にして与えてくれた筈だ。それを自分の子供にもしてあげればいいんだ。リリアは愛し方を知っている。それはエルヴィンがちゃんとリリアに教えてくれた筈だよ?」
「お兄ちゃん……」
「だから私は心配してない。リリアはきっと良いお母さんになれるよ。私だって子供は育てた事ないけど手伝う事は出来るし!!」
「ハンジ……」
「私はリリアとリヴァイの子供に会いたいな。きっと2人に似て可愛いんだろうな。抱っこしたいなぁ!」