第71章 #71 分かれ道
「あの……俺達、席を外した方が…」
「いや、ここにいてくれ。君達にもリリアの状況を知っていて欲しい」
「でも…アルミンにリリア兵長が受け入れられていないから左腕の復活した理由は話せないと言われました。俺達がいたらリリア兵長に悪いんじゃ…」
「それは戦闘中の時だろう?今は大丈夫、私もいるしね」
分かりました、とジャンは返事をし、ミカサも頷いた。
そしてハンジは再びリリアを見ると話し始めた。
「リリアも分かっているように、巨人化が左腕を復活した時点で止まったのはリリアのお腹の中にリヴァイの子供がいるからだ。アッカーマンは巨人化しない、母親と繋がっている子供がアッカーマンだからリリアの巨人化は止まったんだよ」
「………はっ?!えぇぇえ??!!」
ジャンが声を上げる。ミカサも驚いたようで固まっていた。
しかしそれはリリアやリヴァイにとっては嬉しき事のはずなのに、何故彼女はこうも落ち込んでいるのだろうか。
「リリアはあまり嬉しくなさそうだね」
「………」
「リヴァイとの子供だよ?」
「………」
「リリア?」
「………産めない…産んじゃいけない…」
「どうして?」
リリアは手を握りしめた。
過去に自分が受けた虐待が脳裏に甦り身体が震える。
「わた……わ、私……」
「リリア、落ち着いて話してごらん。大丈夫、大丈夫だから」
「私……親からの愛情を知らない。生まれて記憶にあるのは毎日両親から殴られたり、家から出されたり…ご飯を貰えなかったり……痛くて、苦しい思い出ばかり…」
「うん…」
「私は親をそういうモノだと認識している。子供を苦しめる恐ろしい存在だって……一度も頭を撫でてもらった事もない、優しくしてもらった事もない……目が合ったら叩かれて、蹴られて、雪が降る中一晩中外にいた事もあった…」
握った拳の上に涙が落ちる。
思い出すだけでつらい。