第70章 #70 フロック・フォルスター
「彼に敬意を。鉛玉に屈する事なく義勇兵の誇りを貫いた」
「……」
「でも誇りに死ぬ事はない。いいじゃないか屈したって…こんな死に方するより生きていた方が…」
逆らえば殺される。
義勇兵達は言葉も出ない。
「考える時間を与えよう。義勇兵を牢へ」
そう言うと義勇兵達は地下牢へと連れて行かれ、それと入れ替わるように騒ぎを聞きつけたミカサが慌てて駆け付けた。
そこに横たわる死体を見てミカサは一瞬固まったがすぐにジャンに問いかる。
「これは…ジャン…何があったの?」
「さっきの質問だが。俺はエレンの代弁者だ。エレンが島の外の問題を完全解決するなら俺も島の中の遺恨を完全に消し去る。とにかく俺達は4年前…あの地獄を生き残ってようやくこれを手にしたんだ…これが何か分かるか?」
フロックはジャンの前にしゃがみ肩に手を置いた。
「自由だよ!!もうお前らは戦わなくていい、好きに生きていい。なぁジャン、お前は憲兵になって内地で快適に暮らしたかったんだろ?そうしろよ、お前は英雄の一人なんだから」
「…終わった…のか?」
「終わった。だから昔のジャンに戻れよ。いい加減でムカつく生意気なヤローに」
「なんだとお前……」
するとフロックはリリアの方を見た。
下手に逆らえば殺される、言いたい事はあるがここで言うのはやめた方がいい。
リリアは言葉を飲んだ。
「リリア兵長もお疲れ様でした。兵団も機能していない、兵士長なんてもう辞めて自由に生きてください」
「フロック、リヴァイ兵士長とハンジ団長はどうしたの?」
ミカサの問いにチラリとリリアを見ながらフロックは答える。
「あぁ…残念ながらジークに殺された。ね?リリア兵長?」
その念押しが恐ろしい。
リヴァイとハンジを逃した時点で二人はまだ生きていた。
正直あの二人が今生きているのかは分からない。
それを敢えて死んだと言うのはリリアを試しているのだろうか。
完全にこちらの味方なのかを。
「そう……ね」