第70章 #70 フロック・フォルスター
「分かった。私が行ってみる。間に合わないかもしれないけど」
「ちょっ…ちょっと待って下さい!!リリア兵長はダメです!!絶対に体を安静にして下さい!!ラガコ村へは僕が行きます」
「私も付いていく!!」
ガビが力強く言った。
止めても無意味だろう、それにガビがいた方がいい。
アルミンは頷いた。
「じゃあ急いで準備をするからここで待ってて」
「はい!!」
そう言うと駆け足でアルミンは部屋から出て行った。
そんな彼の後をミカサが追う。
残ったリリアもその場から去ろうとしたがニコロが止めた。
「待てリリア。ほらガビ、コイツに言いたい事があるんだろ?」
どうやら自分を呼んだのはガビらしい。
ガビは恐る恐るリリアの前に立ち、俯いた。
「あの……ごめんなさい。私……あなたの大切な人を……」
「ガビが倒した巨人の事?」
ガビが頷く。
「あの巨人は私を家族のように可愛がってくれた大事な人。もう一人の兄のような存在の人だった…」
「………」
「だから……私には討てなかった。でも討たなきゃナイル兄ちゃんは救われなかったし、女の子も助からなかった」
ガビの前に膝を着くと、リリアはガビの手を握り顔を覗き込んだ。
「私には出来なかった。ガビのおかげでナイル兄ちゃんは子供を殺さずに済んだ」
「え……」
「あの人は子供が大好きな人なの……悔いが残る最期だっただろうけど、子供を殺さずに済んで安心はしたと思う」
リリアは優しくガビを抱きしめた。
「恨んで…ないの?」
「恨まないよ。もし逆の立場だったら私もきっとガビと同じ事をしてると思う。だからもう謝らないで、気持ちは伝わったよ」
「…うん……ありがとう」
ガビはリリアの背中に手を回した。
どうしてこの人はこんなにも優しいのだろう。
今の言葉でガビの心がとても軽くなった。