第69章 #69 もう一人のお兄ちゃん
何体の巨人を倒しただろうか。
雷槍の攻撃を邪魔しないよう移動しつつ、リリアはかなりの数の巨人を倒していた。
確実に数は減っている。
(もう少し……)
体力は正直もう限界だ。
巨大樹の森で戦い、ここまであまり休まずのこの戦闘はかなりつらい。
足もフラフラだ。
しかしもう終わりは見えた。
目の前にいた巨人を倒し辺りを見渡すと、残っている巨人はもう数体、その巨人は他の兵士達によって倒されようやく無垢の巨人達の殲滅が終わった。
(疲れた……)
その場にしゃがみ込むと側にアルミン、ミカサ、ジャンが降りてきた。
「リリア兵長!大丈夫ですか?!」
「アルミン、ミカサ、ジャン……良かった、無事だね」
「兵長、一人ですか?リヴァイ兵長はどうしたんです?ハンジさんは?」
視線を落としたリリアを見て三人は察した。
今までリリアが一人で行動する事などなかった。やはり二人に何かあったのだ。
リリアは今までの経緯を皆に話したが、自分が巨人化しなかった事は喋らなかった。
「でもリリア兵長もよく無事で…下手をしたら兵長まで殺されてましたよ…」
「大丈夫、私はイェーガー派から殺されない確信があったから。でもリヴァイとハンジはあそこで逃さないと殺された」
「確信?」
アルミンが首を傾げる。
「私は……エレンから彼がジークの秘策に乗るフリをする事を聞いていた。その事を先にジークに話すと言えば脅しに使えるでしょ」
「リリア兵長!エレンがジークを裏切る事を知っていたんですか?!」
「マーレから戻ってからね……でも私にはエレンを止める事が出来なかった。どうしていいかも分からなかった……ごめんね」
いえ、とアルミンが俯く。
しかし何故エレンはリリアに本当の事を話したのたが疑問だった。
リリアに話した所で彼女の目的がジークである事に変わりないからというのは分かる。
だがそれだけではないような気もする。
するとアルミンはリリアの違和感に気付く。
どうしてリリアは片腕なのに巨人を倒せたのだろうか、いくら残された右腕を鍛えた所で片腕での巨人の討伐は無理だ。