第69章 #69 もう一人のお兄ちゃん
どれだけ時間が経過しただろうか。
巨人の死骸は既に形をなしていなかった。
リリアはゆっくりと顔を上げ空を見た。
家屋を燃やした灰が巻い、遠くでは爆音が聞こえる。
「泣くな……」
本当は声を上げて泣きたい
「立て……」
もう動きたくない
「私の出来る事を……」
そうだ、何のためにここに戻った
「走れ!!!」
リリアは走り出した。
巨人化した仲間達の事を思えば倒すべきだ。
今までもずっとそうしてきた。
リリアは屋根に登り巨人達の位置を確認した。
どうやら巨人達は砦の方に向かっている。おそらく生き残った兵士達が対応しているのだろう。
早く自分も合流しなければ。
移動している最中、目前に見えたのはキースだった。
リリアはキースの隣に着地し、リリアだと気付いたキースは驚きの表情を見せた。
「スミス!!貴様、何故ここに!?」
「理由は後で!今どういう状況ですか!」
「今、ジャン達が砦に残った兵士達を集め上から雷槍で一気に叩く為に準備をしている。我々訓練兵は巨人達を砦に集めている最中だ!」
「分かりました!集めて叩けばいいんですね!!」
「スミスお前は下がれ!!戦えんだろう?!」
「大丈夫です!!」
リリアの左腕は元に戻っている。
巨人の討伐は出来るのだ。
混乱している今なら両腕で戦っても誰にも気づかれやしないだろうと踏んだ。
すると訓練兵達が立体機動でこちらに向かってきた。どうやら巨人を引き付けてきたようだ。
キースが声を上げる。
「こっちだ!!!貴様ら死ぬ気でスミスに着いて行け!!!」
訓練兵達がリリアを視界に入れる。
何故こんな時にリリアに着いて行かねばならないのか、そう、彼らは知らない。
今までリリアの戦う所を見た事がないため、リヴァイが不在の調査兵団で次に強いのはリリアだという事を。
「スミス!頼むぞ!!今ここにいる中で立体機動に長けているのはお前だ!!」
「はい!!」