第69章 #69 もう一人のお兄ちゃん
ドンっという音と共にの口の中からうなじを撃たれ、巨人は倒れ動かなくなった。
カヤの無事を喜び抱き合うブラウス一家、その後ろでリリアはゆっくりと巨人の死骸に近付き手を伸ばした。
死骸からは蒸気が上がり、暫くすれば形も無くなるだろう。
ニコロは眉をひそめながらリリアに視線を送り、ガビに近付いた。
「お前は戦士隊と逃げたと聞いたが。ここで何を」
「捕まったファルコを助けに来た」
「ベンの事か?」
サシャの父親がそう訊ねたその時だ。
騒ぎを聞きつけ兵士二人が屋根の上から声を掛けた。
「オイ!アンタ達無事なのか?!その巨人を殺したのか?その武器は一体何だ…その子がやったのか?!」
対巨人用ライフルを持っていたガビを見て兵士が声を荒げ、ガビに向かって銃を構えた。
「まさか…マーレから侵入したガキか!?」
ここでガビがマーレからの侵入者だとバレてはマズイ。
今度は捕まるだけでは済まない、確実に酷い目に遭わされる。
「答えろ!!さもなくば…」
「違います!!私達は厩舎で一緒に暮らす家族です!!」
声を上げたのはカヤだった。
ガビは目を見開き驚いた。まさかカヤに庇われるとは思っていなかったのだ。
この二人はサシャの件で関係に亀裂が入っていた。カヤはガビを恨んでいたため、まさか彼女が一番にガビを庇うとは思いもしなかったのだ。
「カヤ……」
するとニコロがガビからライフルを取り上げた。
「巨人を殺したのは俺です!元マーレ兵捕虜なんでこの銃が使えました!!」
「そげな事より私達を安全な所まで連れて行って下さい!」
「助けてよ!兵士さん!!」
「お願いします!!」
ブラウス一家が兵士に訴える。
ここまで言えばガビは疑われる事はない。
兵士も納得した様に頷き、構えていた銃を降ろした。