第69章 #69 もう一人のお兄ちゃん
「カヤ!!」
「ダメだ!ブラウスさん!!」
カヤを助けようとサシャの父親が駆け寄ろうとしたがニコロが止める。
リリアは動けなかった。巨人が足を崩している今がチャンスなのに足が動かない。
早く討たなければカヤが喰われてしまう。
しかしこの巨人はナイルだ、この巨人を討伐することはナイルを殺す事となる。
(出来ない……出来ない……私にナイル兄ちゃんを討つことは出来ない……でも…討たなきゃこの子が)
「カヤァァァ!!!!」
リリアは階段を降りると巨人の足にしがみついた。
「ナイル兄ちゃん!!やめてよぉ!!!ねぇ!聞いて!!」
「リリア!危ない!!離れろ!!」
ニコロには分かる。リリアは調査兵団で巨人討伐は出来るはず。
しかし相手がナイルなため斬れない。
武器を構えていないのがさらにそれを物語る。
するとリリアの視界に人影が見えた。
その人物はライフルの様な大きな武器を構え巨人に向かってそれを放った。
その攻撃は巨人に当たり、リリアも反動に飛ばされる。
受け身を取ったリリアが撃った人物を見るとそれがガビだというのが分かった。
ガビはライフルの弾を入れ直すと再び構え、叫んだ。
「カヤ!!起きろぉぉぉぉ!!!」
走り出したガビは倒れた巨人の口の中にライフルを突っ込み、引き金を引いた。
リリアはただ見ている事しか出来なかった。
体は動かず、これからナイルが討たれる事だけは分かった。
待って……待って!!!
この人は私の大事なもう一人の……
「お兄ちゃん!!!!!」