第69章 #69 もう一人のお兄ちゃん
シガンシナ区の街は色々な場所で火が上がっていた。
時間が経過したおかげか、増援に駆け付けた兵士達が巨人達を倒していき少しずつ数が減ってきている。
リリアはまだナイルを探していた。
自分の周辺にいた巨人は心苦しくも自分で討伐した。ナイルを探し出しても、もはや倒すしかないのだがどうしても会いたかった。
「ナイル兄ちゃん……どこにいるの」
その時だ。
少し離れた場所から数人の叫び声が聞こえてきた。
まさか住民が巨人に襲われているのかと、リリアは急いでその叫び声が聞こえた場所へ向かった。
すると予想通り人が巨人に襲われていた。
襲われているのはサシャの両親と一緒に暮らす子供達、そしてニコロだった。
しかも巨人はその風貌からナイルだと分かる。
リリアは巨人の隣に降り、並走した。
それに気付いたニコロが驚き声を上げる。
「リリア!!」
「ニコロ!止まらないで走って!!ナイル兄ちゃん!!止まって!!お願い!!!」
今リリアは何と言った。
この巨人があのナイルだと言うのか。
確かにナイルは憲兵団の師団長、確かにワインを飲んでいるところを見た事がある。
「ナイル兄ちゃん!!」
何故ナイルは最も近くにいるリリアをターゲットにしないのか、気付いていない訳ではない、子供をターゲットにしている気がする。
「走れ!!狭い路地に行くんだ!!」
ニコロの言葉に逃げる一家は方向を変え狭い路地へと走り込んだ。
しかし巨人の方を見ていた少女だけ曲がり損ね、目前に迫る階段と壁に気付かないでいた。
「カヤ!!前見ろ!!!」
「っ?!」
カヤと呼ばれた少女は壁にぶつかり、階段から落ちてしまった。
狙いをカヤに定めた巨人も同じく壁に激突しながらカヤの前に倒れた。