第67章 #67 壁内へ
「フロック!!ワインの事を知っていたの?!」
「知っていましたよ」
「そのせいで30人の兵士が死んだ!!30人!!」
「エルディアの為の犠牲です。多少の犠牲を払ってここまで来た貴女なら分かってくれる筈ですが」
開いた口が塞がらない。
フロックはエルヴィンの事を言っているのか。
「確かにエルヴィン団長は犠牲を出してでも人類の勝利のために進んできた。でも無慈悲に死なせたりはしていない!!一緒にするな!!」
「なら…やはり生き残るのはエルヴィン団長でしたね。彼がいたらきっと違うやり方をしていた事でしょう。今このような事態になっているのは私情で団長を死なせたアンタ達の責任だ」
リリアが俯く。
二人のやり取りを見ていたジークはフロックと目を合わせると肩を上げた。
「まぁ、色々あっていない。俺達の邪魔をする奴らはもうここにはいない。行こう、俺達はただ進むだけだよな……エレン」
「……ジーク……」
「ん?何?リリアちゃん」
リリアはとてつもなく恐ろしい目でジークを睨んでいた。
「全部……お前のせいだ……」
「エルディア人のためだよ」
エルヴィンが死んだのはジークのせいだ。
本当ならここで今すぐ殺したい、自分はそれが目的なのだから。
しかしリリアは迷っていた。
この島の人々の事を思えばエレンとジークを接触させ、地鳴らしをした方がいいのかもしれない。
だがそうなるとこの島以外のたくさんの人の命を犠牲にする事となる。
その人達に何の罪はないのに。
ここでジークを殺す事は簡単だ。しかし自分だけでは判断できない。
まだ、殺せない。