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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第8章 #08 楽しき日



リリアは兵舎に戻り自分の部屋に戻ろうとしたが、あまり眠気はなかった。
リヴァイ班の皆にリラックスしてほしいがために楽しげに振る舞ってはいたが、内心自分も不安でならない。

壁外調査へはもう何度も行っているはずなのに、今回ばかりは自分に与えられた任務が少しプレッシャーになっているのだ。


「はぁ…」

夜も更けて皆が寝静まった頃、リリアは兵舎の通路の窓から外を眺めていた。
空には星が輝いており、空気が澄んでいる。
とても明日、戦いに行く雰囲気を感じられない穏やかさだ。

「リリア?」

突然声をかけられ振り向くと、そこにはエルヴィンが驚いた顔をして立っていた。
おそらく遅くまで明日の準備をしていたのだろう。
ようやく自分の部屋に戻るところのようだ。

「こんな時間にどうした?明日に響くぞ」
「お兄ちゃんこそ、まだ頑張ってたの?」

ちょっとな、とエルヴィンがリリアの隣に立った。

「眠れないのか?」
「壁外調査へは何度も行ってるから、前日にここまで緊張する事はあまりないのだけど、今回ばかりはね」

リリアが口を尖らせると、エルヴィンが苦笑いをした。
ようするに自分のせいだと。

「分かった。なら温かいものを淹れよう」
「いいよ、お兄ちゃんも早く休まないと」
「いいから、おいで」

エルヴィンはリリアの頭を撫でると手を差し出した。
リリアは躊躇したが、その微笑みに負け手を取ると、エルヴィンは手に力を込めて握り返した。

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