第66章 #66 見破れなかった覚悟
「雨か……行けるか?」
「うん」
二人は荷馬車に戻り再び移動を始めた。
リリアはリヴァイに寄りかかり、リヴァイもリリアを抱き寄せる。
「寒くねぇか?」
「大丈夫、ありがとう」
しかしリリアの元気はない。
体調が良くないのは目に見えて分かる。
「揺れも平気か?吐き気は?」
「もう、リヴァイ。心配しすぎ!大丈夫だよ」
「とにかくハンジと合流したい……あいつならお前が巨人化しなかった理由が分かるかもしれねぇからな」
と、その時だ。
後ろで気を失っていたジークが何かを呟いた。
「エルディアの……安楽死……」
荷馬車を止め、リヴァイはゆっくりとジークを見た。
「なんつった?安楽死?お前はこれからクセェ巨人の口の中で自分の体が咀嚼される音を聞きながら死ぬ訳だが。お前にしちゃ、随分と安らかな死に方だろ?奪った仲間達の命に比べてみれば」
「奪ってない……救ってやったんだ……そいつらから生まれてくる命を……この…残酷な世界から……」
リヴァイは立ち上がるとジークの前に立ち、ブレードを抜いた。
「また足が伸びてきたみてぇだな…」
リリアも立ち上がりリヴァイの横に立ち、ジークを見下ろした。
するとジークがリリアを見上げて再び呟く。
「その子供も……俺が今から救ってやるからな……こんな残酷な世界に……生まれちゃいけない」
二人が目を見開く。
今、ジークはなんと言った?
「クサヴァーさぁぁぁん!!見ててくれよぉぉぉぉ!!!」
「っ?!」
ジークは叫ぶと首に繋がれたワイヤーを引っ張った。
絶対にそんな事はしないと思っていた予想外の行動、リヴァイはリリアの前に立ち、自分の背中に隠すように引き寄せた。
その瞬間雷槍が爆発し、爆音と共にジークとリヴァイ、リリアの3人を吹き飛ばした。