第66章 #66 見破れなかった覚悟
そう言おうとしたのだろう。
リヴァイも小さな頃に母親を亡くし、伯父も突然姿を消して地下で一人で生きてきたのだ。
口には出さなくとも家族というものに憧れを持っていたのかもしれない。
心から愛する人が出来、全て終わったら結婚しようと、家族になれると思った矢先にリリアからの『殺してくれ』の残酷な言葉だ。
自分は何という言葉でリヴァイを傷付けてしまったのだろうか。
「リヴァイ……リヴァイ…ごめんなさい、ごめんなさい。酷い事言ってごめんなさい!!」
リヴァイに抱き付くとボロボロと涙が溢れた。
こんなにも自分を愛してくれている人を最低な言葉で傷付けてしまった。
するとリヴァイも力一杯リリアの事を抱き返した。
分かっている、リヴァイも分かっているのだ。リリアが巨人になるかならないか不安に押しつぶされそうなのも。
「リヴァイぃ……怖い…怖いよぉ」
「大丈夫だ…例えお前が巨人になっても生け捕りにして俺が一生面倒見てやる」
「リヴァイの事忘れちゃうよ」
「俺が覚えているから問題ない」
「貰った指輪も壊れちゃうよぉ…」
「お前のサイズに合わせてまた買ってやる」
「リヴァイに可愛いって言ってもらえなくなっちゃう」
「安心しろ、お前は巨人になっても可愛いし綺麗だ…って何の心配だよ馬鹿野郎」
泣きながら、へへへと笑うリリア。
少しだけ、ほんの少しだけ落ち着いた。冗談も言える。
リヴァイはリリアから離れると両手で頬を支えリリアを見つめた。
「まだ巨人になってねぇ。不安な気持ちも分かるが頼むから殺せとか死ぬとか言うな」
「はい……ごめんなさい」
リヴァイはそのまま優しくリリアの唇にキスをした。
ポンポンと安心させるように頭を抱きしめたその時だ。
ポツポツと雨が降り二人の体を濡らし始めた。