第65章 #65 叫び
その頃リヴァイはジークと話をしていた。
ラガコ村の住人を巨人化させた時の話だ。
ジークはあの時、村にガスを撒いたと言う。
「ガス兵器という物だ。そのガスは俺の脊髄液を含んでいる。そいつをわずかでも吸ったユミルの民は直後に硬直、体の自由が奪われ意識を失う。あとは俺が命令するだけで道を通じて巨人の力が座標に送り込まれる。だからその村の巨人は俺の命令通りに動くって訳だ」
「その村じゃない、ラガコ村だ。お前が皆殺しにした村の名前だろ。覚えておけクソヒゲ」
「あぁ…俺だって避けたかったさ。だがやらなければ俺の真意がエルディア復建にあるとバレて、この島に希望をもたらす事は叶わなかっただろう……って同じ事をこの島に上陸してすぐに話したよなぁ?何故何度も聞き返す」
リヴァイはジークを睨んだ。
たくさんの人を犠牲にしておいて、村の名前も覚えていない事に腹が立って仕方ない。
「お前が耳カスほどの罪悪感も覚えちゃいねぇって事がよく分かる。本当にエルディアを救うつもりなのか知らねぇが、当の人命に興味がない事は確かだ」
「お前モテねぇだろ。勝手に人の気持ちを分かった気になるなよ」
ジークのその一言にリヴァイが一瞬言葉に詰まった。
「分かるさ。モテた事くらい……ある…」
「あぁ、そうかい!それで?俺とエレンが会って実験を開始するのはいつだ?」
「決めるのは俺じゃねぇ。本部の命令を待っている」
「いつまでも時間があると思っているなら間違いだと伝えろ」
「それだけは同じ意見だ」
と、その時だ。
リリアが後方からリヴァイに声を掛けた。
「リヴァイ」
「どうした?」
「ちょっと……」
リリアに呼ばれ、リヴァイはジークをひと睨みするとリリアについてその場を離れた。