第65章 #65 叫び
その日、壁内から急ぎの伝達が届いた。
先にその話を聞いたのはリリア、その内容はとんでもないものだった。
「ザックレー総統が殺された?」
「はい、何でも調査兵団の新兵が総統の私物であるイスに爆弾を仕掛けていたようで。それと…」
壁内からの伝達を調査兵のバリスが続ける。
「エレンが逃亡し、兵団内にイェーガー派という派閥が出来たようで。彼らはエレンと共に行動しているようです。兵団内から100名程が離反しています」
「イェーガー派?リーダーは誰?」
「フロックです」
リリアは唇を噛んだ。
近いうちにエレンが地下牢から出るだろうとは予想していたが、ザックレーを殺し、兵団内から離反者がそんなに出るとは思っていなかった。
しかもまだ離反者は潜んでいる可能性が高い、と。
「リヴァイを呼んでくるから詳しくはその時に教えて」
「はい!」
自分達がいない間に壁内はとんでもない事になっている。
ハンジやアルミン、ミカサ、コニーやジャンは大丈夫だろうか、不安がリリアを襲う。
やはりエレンから全てを聞いていた自分は壁内に残るべきだったのだろうか。
しかし残っていた所でエレンの脱走やザックレーの殺害を止める事は出来なかっただろう。
結果は同じだ。
エレンが脱走したとなると向かうのはどこだ。
いや、その前にジークの居場所を特定するはず。
自分はエレンにジークの居場所を教えなかった。
なら二人を合流させるためにイェーガー派が行うのは、壁内のジークの居場所を知っている者から吐かせる事だろう。
知っているのはハンジと補給と連絡を取るための3名の兵士だ。
「ハンジ………」