第64章 #64 マーレ産ワイン
「すげぇな」
「ね?野いちごの宝庫!」
リリアは野いちごを一つ取るとリヴァイに手を伸ばした。
食べてみろ、という意味だろうか。
リヴァイはリリアの指から野いちごをパクリと食べる。
甘いと言うよりは酸っぱさが強く、リヴァイにはあまり美味しいとは言えない味だった。
「ちょっと酸っぱくねぇ?」
「これが良いんだよ」
ふーん、とリヴァイも野いちごを手に取った。
そしてそれをリリアに向けると、リリアもパクリと口に含む。
指にリリアの唇が触れ、リヴァイの胸が少し高鳴った。
もう一つ取りリリアの方に向ける。リリアが口を開いて食べようとしたその時、いちごを潰しその果汁をリリアの唇に塗り付けた。
まるで口紅を付けたように唇が赤く染まる。
「…紅……」
「リヴァイのためのお化粧とかまったくしてないなぁ」
「まぁお前は何もしなくても綺麗だけどな」
「むはは!!」
するとリヴァイが頭を引き寄せ赤く染まったその唇にキスをした。
ペロリと自分の付けた果汁を舐めとるとギュッと力強く抱きしめる。リリアもリヴァイの背中に手を回した。
「リヴァイ……ごめんね。私、最近酷い事ばかり言ってる」
「気にしてねぇ。体調が悪くてお前も不安なんだろ」
「優しい〜。普通なら凄く怒るからね?心配してるのに何だその態度!って」
「そりゃあお前、短気だな」
「…リヴァイが優しいんだって…」
リヴァイはゆっくりとリリアから離れるとジッと顔を見つめた。
「頼むから……死ぬなよ」
「死なないってば!まだお嫁さんにしてもらってないのに!」
へへへ、とリリアが笑い返す。
「俺的にはもう嫁なんだが」
「あはは!!」
「……なぁ、エレンは何か言っていたか?お前の体調的な事を」
「体調?」
リヴァイは今までリリアからエレンの事は聞かなかった。
聞いた所で答えるはずがないと分かっていたからだ。
しかし飛行船でリリアの体調の事を気にしていたエレン、失踪後、長い会話をする事を許したくらいだ、何かリリアに言っているはず。
リリアもエレンの事ではなく、自分への事なら喋るのではないだろうかとリヴァイは考えた。