第63章 #63 異変
「はぁ?!馬鹿にしてんの?!私は戦士候補生なの!優秀な!!悪魔なんか簡単に…」
「私は負けないぞ、ガビちゃん!!こう見えて強いのだ」
「ふざけんな!!!ここから出せ!!」
「ガビ!!!この人はあのエレン・イェーガーが慕う人だ!!甘く見ちゃダメだって!!」
エレンという名に一瞬固まり、ガビはリリアを見た。
するとリリアはファルコに視線を移す。
「聞きたかったんだけど、ファルコはどうして私の名前を知っていたの?」
「え……あの……クルーガー…いや、エレン・イェーガーが話してくれて。薄緑色の香り袋を修繕する時にあなたの名前を……それをくれた人だって」
「そう……」
「あの…受け取りましたか?実はそれを返すと言っていて…」
「え?あ、うん」
リリアはポケットから香り袋を出すとファルコに見せた。
それです、とファルコが頷く。
「中に手紙と、花の種を入れて返すって言ってました。乾燥した花に紛れて分かりにくいだろうけどいつか中身を植えてみてください。綺麗な花が咲きますから!病院内に植えられた綺麗な花の種で一緒に取っ……」
そこまで言ってファルコは黙り込んだ。
何を必死にここまで敵だったエレンの事を話しているのだろうかと思ったのだろう。
しかしリリアは柔らかく微笑んだ。
「そうなんだ……私、花が好きだから楽しみにしておくね。エレンと一緒にこの袋を直してくれてありがとう」
「い、いえ……あの…手の怪我は……それもとても心配してて」
あぁ、とリリアは右手を出して動かした。
「本人にも言われたよ、大丈夫!ありがとう」
「いえ……片腕なのに兵士なんですね」
「あぁ、4年前にジークに持っていかれたんだ」
ジークという名前に二人の肩が上がった。
そして再びガビに火がついてしまう。