第63章 #63 異変
2人分の食事を持ち、リリアはガビとファルコが入れられている牢へ向かった。
ガビとファルコはすでに起きており、近付いてきた足音に立ち上がり警戒していた。
しかし顔を覗かせたのは和かな笑顔を向けたリリアだ。
「ガビ、ファルコおはよう!!ご飯持ってきたよ」
ファルコは少し怯えている、対称的にガビはリリアに敵意丸出しだ。
「はい!どうぞ!」
「いらない!!悪魔の持ってきた物なんて食べれるかっ!!」
「ガ、ガビ…!」
「このパンなんて美味しいよー!さっき私も食べたけど、木の実入ってるの。カリカリな歯応えが…」
「どっか行け!!!!」
ガビに拒絶されようがリリアは笑顔のまま鉄格子の下の隙間から食事を渡した。
「さ、食べて!」
「えっと……リリアさん」
「うん」
「どうしてオレたちの事を気にしてくれるんですか」
「そんなの理由いる?」
ファルコが言葉を飲み込む。自分達は敵なのに、リリアの仲間を殺したのに何故自分達にここまで気を使うのか。
するとガビが口を開いた。
「悪魔っ!!アンタなんか信用しない!!早くどっかに行け!!」
「仲良く出来ない?」
「はぁぁ?誰が悪魔なんかと仲良く出来るかっ!!こんな牢に入れられてなかったらここで殺してやるのに!!」
そうか、とリリアは少し寂しそうに立ち上がった。
「私は仲良くしたいんだけどな」
「うるさい!!喋るな!!早く消えろ!!悪魔!!!」
「ガビっ!!」
ファルコが必死にガビを止めるが彼女の怒りはおさまらない。
それどころか全く怯みもしないリリアにさらに怒りが増しているようだ。
「その余裕な顔がムカつく!!あんたみたいな奴、直ぐ殺せるのに!!」
「ガビいい加減に……」
「そのまま返そう」
リリアはガビの前でしゃがんでニッコリ笑った。