第62章 #62 ありがとう、さようなら
「終わった?」
「はい。それで話はなんです?」
「何を聞いても答えてくれないのは分かってる。ただ一つ教えて欲しいんだ」
「何ですか?」
「前に私に言ったよね『仲間を大事に思ってます』って」
そうですね、とエレンは返した。
「その言葉は今も嘘偽りないのか、それだけが聞きたい」
「……ないですよ。オレは仲間が大事です」
リリアは俯いた。
ならば何故、一人で行動したのか、何故何も話してくれなかったのか。ジークの秘策に乗ればヒストリアの犠牲は避けられない。
それを聞こうと思ったが、先に答えたのはエレンだった。
「ヒストリアの事は大丈夫です。彼女には……話してあります、全部」
「え?」
その話が本当なら、どうしてヒストリアはエレンを止めない?
「止めようとしました、ヒストリアは。でもオレがヒストリアを"世界で一番悪い子"にしたんです」
リリアがエレンを見つめる。
「オレはジークの秘策に乗ったわけじゃない。乗ったフリをしているだけです」
「え……」
「ジークの秘策、それは『安楽死計画』。ユミルの民の生殖機能をなくし子供を産ませないようにし人口を減らしていく。そしていずれエルディア人はいなくなる」
「そんな事……じゃあ…どうするの?ジークの秘策に乗ったフリをしてエレンはどうするの?」
エレンは目を閉じ一呼吸置いた後、再びリリアを見た。
「オレが全てを終わらせる。始祖の力を掌握し『地鳴らし』でこの島以外の全てを踏みならす。大勢の人の命を奪う事になるのは分かっています。だけどジークの思い通りにはさせない。オレは……この先の未来、仲間達に長く、幸せに生きて欲しい。だからオレが世界の敵になって全てを終わらせる」
「エレン……でも…」
「時間がないんです。これしか方法がない」
確かにエレンの言う通り、時間がなさすぎる。
しかしこのやり方はあまりに惨い。島を守ると言ってもたくさんの命を犠牲にするものだ。