第62章 #62 ありがとう、さようなら
「リリア」
彼女の部屋の前には着替えを終えたリヴァイがいた。
名前を呼んでも出てこないリリア、部屋の中には気配がない。
ニコロの所へ行くと言っていたが、あれから数時間経っている。もう戻って来てもいい時間だ。
ならば今どこにいるのか、着替えもせずに。
リヴァイはリリアの部屋の扉を背にズルズルと腰を落とした。
疲労で眠い、しかしリリアの事が気になって仕方がない。
だがリヴァイは分かっていた。
おそらくリリアは今、エレンの所にいる。
何故リリアがあんなにもエレンを守ろうとするのか疑問だった。
彼女は自分を傷付ける者を嫌う、しかしエレンだけは違う。
どんなにリリアを痛めつけても、周りがエレンを信用しなくなっていてもリリアだけは味方になろうとする。
何故だ。
思い付くのは一つしかない。
エレンの事を守れと言ったのはエルヴィンだ。
リリアは今もエルヴィンの命令を守っている。
「……クソ……厄介だな」
髪をクシャリと掴み、ため息を漏らすとリヴァイは固まった。
そうだ、リリアは自分を傷付ける者を嫌う、エレンはエルヴィンが"守れ"と言ったからどんな事をされても守ろうとする。
ならば自分は?
昔、彼女を傷付けた自分は?
今リリアが自分を好いてくれているのは何故だ。
"リリア、リヴァイの言う事を聞きなさい"
あぁ、もしかしたら自分の事も
リリアはエルヴィンの命令に従っているだけなのかもしれない
エルヴィンが信頼してくれたリヴァイだから
好いてくれているだけなのかもしれない
心の奥底では
どう思われているのだろうか