第62章 #62 ありがとう、さようなら
その頃リリアはニコロのいるレストランへ到着していた。
店内に入りニコロを探す。
「あっ、お前!」
後ろから声を掛けられ振り向くと、そこにはニコロがお皿を持って立っていた。
どうやらテーブルの片付けをしていたようだ。
ニコロはリリアに気が付くと手を上げた。
「よぉ、帰ったのか?」
「ニコロ……」
「何だよ、着替えもせずに。お前もサシャみたいにメシが我慢出来ないのか?あ、そうだ、帰ってきたならサシャに伝えてくれよ。食べたがっていたメニューもう少しで出来そうだから、休んだら来いって」
笑顔で話すニコロに胸が痛む。
しかし言わなくてはならない、誰かが。
「サシャは来れない」
「は?何だよ、怪我でもしたか?」
「サシャは……死んだ」
ニコロが固まる。しかしすぐに苦笑いをしながらリリアの肩を叩いた。
「冗談を、アイツがそう簡単に死ぬかよ」
「………」
「何だよ……嘘なんだろ?」
「嘘じゃない……サシャは死んだ」
「そんな訳あるかよ!!だってアイツ!帰ったらすぐに俺の料理食べに来るって約束っ………約束……したのに…」
ニコロが泣きながら崩れ落ちた。
リリアにはかける言葉が見つからない。
するとニコロはゆっくり立ち上がりフラフラとどこかへ行ってしまった。
追えない、追った所で自分が何か出来るわけではない、リリアもレストランから離れた。
気持ちを落ち着かせ部屋へ戻ろうとしたリリアだったが、ふと足を止め方向を変えた。
明日からはジークの監視で壁外に出る。いつ戻れるかは分からない。
ならば今のうちに話をしておかなければ。
リリアは向かった。
エレンが軟禁されている地下牢へ。