第62章 #62 ありがとう、さようなら
「それじゃあ連れて行ってくれ」
パラディ島に到着し、ハンジの命で兵士達がエレンとジークを飛行船から連れ出した。
巨人化の恐れがあるため、エレンは暫く地下の牢で軟禁だ。
ジークに関しては明日から移動させエレンとの接触をしないようにさせる。
飛行船の窓からリリアは連れて行かれる彼らを見送った。
するとその後に運び出されたのは白い布に包まれたサシャ、その隣には泣きながら寄り添うコニーやジャン、アルミン、ミカサ。
リリアは深く息を吐くとゴンっと窓に額をぶつけた。
ふとリヴァイが気付く。
パラディ島出発前の時と比べ、リリアの体格が少し違う。
元々細いがさらに痩せ細っているように見える。
「おいリリア、お前痩せたか?」
「え?そんなの今関係ないでしょ。私、降りるね、ニコロの所に行ってくる」
「おい!」
「リヴァイ」
追いかけようとしたリヴァイをハンジが止めた。
「ごめん、ちょっといい?」
「あ?」
「リリアの事なんだけど…」
ハンジは今のリリアの体調の事をリヴァイに伝えた。
頭痛が増え、そのためか嘔吐しあまり食べなくなった事、それが今まで頭部を痛め続けた後遺症が出てきている可能性があるという事。
それを聞いた途端にリヴァイの顔色が変わった。
「どうしてそれを知らせなかった!」
「知らせたら今みたいに動揺するだろ?だから知らせたくなかった。今回の作戦に支障が出ては困るからね」
今回の作戦の失敗は死を意味する。
だから絶対にリヴァイを不安にさせるわけにはいかなかったのだ。
リヴァイは拳を握ると飛行船の壁をガンっと叩き船から降りようとした。
「リヴァイ」
「………なんだよ」
「もし…もしもだよ?もし頭の病気だったらいつ死んでしまうか分からない。今日元気でも明日……もしかしたら数時間後に死んでしまう事だってある。それを頭に入れておいてね」
何も言わずリヴァイはそのまま飛行船を降りた。
はぁ、とハンジが息を漏らす。
かなりの動揺しているように見えた。やはり事前に言わなくて良かった。
窓から見えるリヴァイの姿はとてもつらそうな雰囲気を出し、ゆっくりと兵舎の方へと戻って行った。